民法第20条第4条(制限行為能力者の相手方の催告権)の条文

第20条(制限行為能力者の相手方の催告権)

1 制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、1箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

2 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。

3 特別の方式を要する行為については、前2項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

4 制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第17条第1項の審判を受けた被補助人に対しては、第1項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。




民法第20条第4項(制限行為能力者の相手方の催告権)の解説

趣旨

本項は、制限行為能力者の相手方の催告権のうち、制限行為能力者自身に対するものについて規定しています。

制限行為能力者の相手方は、被保佐人(第13条第1項参照)または第1項(第17条第1項参照)の審判を受けた被補助人に対し、1ヶ月以上の期間を定めて、その期間内に取消しする(第120条第1項参照)ことができる行為について、その保佐人(第12条参照)または補助人(第16条参照)の追認を得るように催告をすることができます。

この場合に、その被保佐人または被補助人がその期間内にその追認を得たという通知をしないときは、その行為は、取消されたものとみなします。

被保佐人や被補助人がおこなった法律行為が取り消される(第120条第1項参照)のか追認される(第122条参照)のかを確定させるために、その被保佐人や被補助人の相手方は、その被保佐人や被補助人に対して、それぞれ保佐人や補助人の追認を得るように催告ができる、ということです。

被保佐人や被補助人である本人に対する催告

本項は、被保佐人や被補助人である本人を通して、間接的に、その保佐人や補助人の追認を得るように催告する規定です。

これは、保佐人や補助人に直接追認を催告する第20条第2項とは異なる内容です。

本項では、制限行為能力者の相手方とその保護者である保佐人・補助人との間に保護するべき制限行為能力者(被保佐人・被補助人)を挟んだ形になっています。

このため、催告があったにもかかわらず確答が無かった場合は、取り消されたものとみなされます。

つまり、原則取消しとして、制限行為能力者を保護している形となっています。

みなし規定

本項はいわゆる「みなし規定」です。

【意味・定義】みなし規定とは?

みなし規定とは、「みなす」という表現が使われている法律上の規定のことであり、ある事実があった場合に、法律上、当然にそのような効果を認める規定のことをいう。

このため、本項の被保佐人または被補助人が期間内に確答をしない場合は、実際にはその被保佐人または被補助人の者が追認しようとしていたときときであっても、取り消したものとして扱います。

用語の定義

行為能力者とは?

【意味・定義】行為能力者とは?

行為能力者とは、行為能力の制限を受けない者をいう。




契約実務における注意点

契約実務においては、本項が適用されるような事態は避けるべきです。

というのも、わざわざ制限行為能力者を通じて催告しなくても第20条第2項にもとづいて、直接、保佐人や補助人に催告することができる以上、なにも制限行為能力者を通じた催告をする必要はありません。

ただし、保佐人や補助人に対する催告ができないような状態であれば、やむを得ず本項にもとづいて、被保佐人や被補助人に対して催告するべきです。

注意すべき契約書

  • 被保佐人や被補助人が契約当事者となる契約書