民法第124条第1項(追認の要件)の条文

第124条(追認の要件)

1 取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。

2 次に掲げる場合には、前項の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。

(1)法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。

(2)制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。




民法第124条第1項(追認の要件)の解説

趣旨

本項は、追認の要件について規定しています。

追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権があることを知った後にしなければ、効力が生じません。

というのも、取消しの原因となっていた状況が消滅する前に追認したとしても、その追認は、取消しの原因となっていた状況でおこなわれているからです。

また、追認は、取消権を放棄することでもあるため、そもそも取消権の存在を知らなければ、効力が生じません。

「取消しの原因となっていた状況」とは

本項における「取消しの原因となっていた状況」とは、次の場合の後をいいます。

「取消しの原因となっていた状況」
  • 未成年者であること
  • 成年被後見人について後見開始の審判があったこと
  • 被保佐人について保佐開始の審判があったこと
  • 被補助人について補助開始の審判があったこと
  • 錯誤があったこと
  • 詐欺や強迫を受けたこと




用語の定義

取消しとは?

【意味・定義】取消しとは?

取消しとは、いったん有効に効果が生じた法律行為を遡って無効にすることをいう。




改正情報等

新旧対照表

第124条(追認の要件)新旧対照表
改正法旧法

改正第124条(追認の要件)

1 取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。

2 次に掲げる場合には、前項の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。

(1)法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。

(2)制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。

(削る)

旧第124条(追認の要件)

1 追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にしなければ、その効力を生じない。

2 成年被後見人は、行為能力者となった後にその行為を了知したときは、その了知をした後でなければ、追認をすることができない。

3 前2項の規定は、法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をする場合には、適用しない。

本条は、平成29年改正民法(2020年4月1日施行)により、以上のように改正されました。

改正情報

本項の改正では、過去の判例(大審院民事部判決大正5年12月28日)を反映し、追認の要件として、「取消権を有することを知った後」を追加しました。




契約実務における注意点

契約実務上、本項は、特に制限行為能力者を相手とした場合に重要となります。

ただし、実際の実務においては、本項により取消しの原因となっていた状況が消滅した後に追認を得るよりは、第124条第3項にもとづく法定代理人、保佐人または被補助人による追認を得るべきです。

これは、取消しの原因となっていた状況が消滅した後になるまで待たずに、早急に契約を確定させ、取消しができる状態を解消するべきだからです。

注意すべき契約書

  • 制限行為能力者を相手方とした契約の契約書