民法第150条第1項(催告による時効の完成猶予)の条文

第150条(催告による時効の完成猶予)

1 催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。




民法第150条第1項(催告による時効の完成猶予)の解説

趣旨:催告は時効の完成猶予事由

本項は、催告があった場合における時効の完成猶予について規定しています。

時効は、催告によって、催告があった時点から6ヶ月後まで、完成が猶予されます。

催告とは?

催告とは、債務者に対する債権者の意思の通知のことを意味します。

【意味・定義】催告とは?

催告とは、債務者に対する債権者の意思の通知をいう。

催告は、旧民法第147条第1号では「請求」に含まれていました。




用語の定義

完成(時効)とは?

【意味・定義】完成(時効)とは?

時効制度における完成とは、時効の期間が満了することをいう。

完成猶予(時効)とは?

【意味・定義】完成猶予(時効)とは?

時効制度における完成猶予とは、特定の事由が存在する間に、時効は進行するものの、時効の完成が一定期間は猶予されることをいう。




改正情報等

新旧対照表

民法第150条(催告による時効の完成猶予)新旧対照表
改正法旧法

改正民法第150条(催告による時効の完成猶予)

1 催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

旧民法第150条(支払督促)

支払督促は、債権者が民事訴訟法第392条に規定する期間内に仮執行の宣言の申立てをしないことによりその効力を失うときは、時効の中断の効力を生じない。

本条は、平成29年改正民法(2020年4月1日施行)により、以上のように改正されました。

改正情報

旧民法第149条は改正民法第147条第1項第2号へ移行

旧民法第149条の内容は、改正民法第147条第1項第2号において規定されました。

これにより、本条は削除のうえ、催告(旧民法第153条)による完成猶予について、規定されました。

旧民法第153条(催告)

催告は、6箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事審判法 による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。

「中断」「停止」から「完成猶予」「更新」へ

旧民法では、時効について、「中断」という用語が使われていました。

この「中断」は、改正後の「完成猶予」と「更新」の両方の意味で使われており、非常に理解しづらいものでした。

このため、平成29年改正民法では、時効制度全般において、「中断」の用語の意味を整理し、内容に応じて、「完成猶予」と「更新」に改めました。

「停止」から「完成猶予」へ

旧民法における時効の「停止」については、あたかも時効の進行そのものが停止するかのような誤解の原因となりかねないものでした。

このため、こちらも併せて「完成猶予」という表現に改められています。