【意味・定義】制限行為能力者とは?

制限行為能力者とは、行為能力が制限される「(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助人」(第13条第1項第10号)をいう。




【意味・定義】制限行為能力者とは?

制限行為能力者とは、「(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助人」のことです(第13条第1項第10号参照)。

行為能力とは、「私法上の法律行為を単独で完全におこなうことができる能力」のことをいいます。

【意味・定義】行為能力とは?

行為能力とは、私法上の法律行為を単独で完全におこなうことができる能力をいう。

このため、行為能力者は、「私法上の法律行為を単独で完全におこなうことができる能力に制限を受ける者」ということになります。




4種類の制限行為能力者

制限行為能力者の4種類は?

民法では、制限行為能力者は、次の者です(第13条第1項第10号参照)。

制限行為能力者の4種類一覧

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

未成年者

未成年者の概要
定義18歳未満の成年でない者
単独でできない行為原則としてすべての行為(例外に該当しないすべての行為)
単独でできる行為
  1. 「単に権利を得、又は義務を免れる法律行為」(民法第5条第1項ただし書き
  2. 「法定代理人が目的を定めて処分を許した財産」の処分(民法第5条第2項
  3. 許可を受けた営業に関する行為(民法第6条第1項
  4. 子の認知(民法第780条)
  5. 認知の訴え(民法第787条)
  6. 氏の変更(民法第791条)
  7. 遺言による財産の処分(民法第961条、民法第962条。ただし、15歳以上に限る)
単独行為の効果取消し得る(民法第5条第2項
単独行為の取消権者
  1. 未成年者本人
  2. 法定代理人(親権者または未成年後見人)
  3. 承継人
主な保護者
  1. 親権者(民法第818条、民法第819条)
  2. 未成年後見人(民法第838条第1項)
保護者の権限
  1. 代理権
  2. 同意権
  3. 追認権
  4. 取消権
補足

成年被後見人

成年被後見人の概要
定義成年被後見人とは、物事の認識ができない者であって、家庭裁判所からの後見開始の審判を受けたもの
単独でできない行為原則としてすべての行為(例外に該当しないすべての行為)
単独でできる行為日用品の購入その他日常生活に関する行為」(民法第9条
単独行為の効果取消し得る(民法第9条
単独行為の取消権者
  1. 成年被後見人本人
  2. 成年後見人
  3. 承継人
主な保護者成年後見人
保護者の権限
  1. 代理権
  2. 追認権
  3. 取消権
補足成年後見人には、同意権がない。これは、成年被後見人が、必ずしも成年後見人の同意したとおりの行為をするとは限らないから。

被保佐人

被保佐人の概要
定義物事を認識する能力が著しく不十分な者のうち、家庭裁判所からの保佐開始の審判を受けたもの
単独でできない行為
  1. 元本を領収し、または利用すること。(例:借金を返済してもらうこと)
  2. 借財又は保証をすること。(例:他人から借金をしたり、連帯保証の契約を結んだりすること)
  3. 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。(例:自宅を売却すること)
  4. 訴訟行為をすること。(例:裁判を起こすこと)
  5. 贈与、和解または仲裁合意(仲裁法第2条第1項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。(例:贈与契約や和解契約を結ぶこと)
  6. 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。(例:遺産分割協議書に調印すること)
  7. 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、または負担付遺贈を承認すること。(例:遺言によって財産を分けてもらえる権利を放棄すること)
  8. 新築、改築、増築又は大修繕をすること。(例:自宅のリフォームをすること)
  9. 第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。(例:5年間のアパートを借りる契約を結ぶこと)
  10. 上記の行為について、制限行為能力者の法定代理人としてすること。
  11. 家庭裁判所からの審判を受けた行為(民法第13条第2項
単独でできる行為日用品の購入その他日常生活に関する行為」(民法第13条第1項民法第9条
単独行為の効果取消し得る(民法第13条第4項
単独行為の取消権者
  1. 被保佐人本人
  2. 保佐人
  3. 臨時保佐人(民法第876の2条第3項)
  4. 保佐監督人(民法第876の3条第2項)
  5. 承継人
主な保護者保佐人
保護者の権限
  1. 同意権
  2. 追認権
  3. 取消権
補足保佐人には原則として代理権は無いが、家庭裁判所の審判により、保佐人に代理権を付与できる(民法第876条の4第1項)。

被補助人

被補助人の概要
定義物事を認識する能力が不十分な者であって、庭裁判所からの補助開始の審判を受けたもの
単独でできない行為以下の法律行為のうち、家庭裁判所の審判があったもの民法第17条第1項

  1. 元本を領収し、または利用すること。(例:借金を返済してもらうこと)
  2. 借財又は保証をすること。(例:他人から借金をしたり、連帯保証の契約を結んだりすること)
  3. 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。(例:自宅を売却すること)
  4. 訴訟行為をすること。(例:裁判を起こすこと)
  5. 贈与、和解または仲裁合意(仲裁法第2条第1項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。(例:贈与契約や和解契約を結ぶこと)
  6. 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。(例:遺産分割協議書に調印すること)
  7. 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、または負担付遺贈を承認すること。(例:遺言によって財産を分けてもらえる権利を放棄すること)
  8. 新築、改築、増築又は大修繕をすること。(例:自宅のリフォームをすること)
  9. 第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。(例:5年間のアパートを借りる契約を結ぶこと)
  10. 上記の行為について、制限行為能力者の法定代理人としてすること。
単独でできる行為原則としてすべての行為(上記の「単独でできない行為」以外の行為)
単独行為の効果取消し得る(民法第17条第4項
単独行為の取消権者
  1. 被補助人本人
  2. 補助人
  3. 臨時補助人(民法第876の7条第3項)
  4. 補助監督人(民法第876の8第2項条)
  5. 承継人
主な保護者補助人
保護者の権限
  1. 同意権
  2. 追認権
  3. 取消権
補足補助人には原則として代理権は無いが、家庭裁判所の審判により、保佐人に代理権を付与できる(民法第876条の9第1項)。




制限行為能力者の補足

制限能力者と制限行為能力者の違いは?

「制限能力者」とは、制限行為能力者の略称であり、その定義は、制限行為能力者と同一です。

このため、制限能力者と制限行為能力者には、違いがありません。




契約実務における注意点

制限行為能力者との契約は取消しのリスクがある

契約実務では、契約の相手方が行為能力者であるか制限行為能力者であるかの違いは、契約の根幹に関わる重要なポイントです。

相手方が制限行為能力者である場合、その制限行為能力者自身やその保護者(法定代理人など)により、契約が無条件で取消されてしまう可能性があります(第5条第2項第9条第13条第4項第17条第4項参照)。

つまり、制限行為能力者との契約は、不完全な契約であるといえます。

未成年者以外の制限行為能力者は確認が難しい

この点について、相手方が行為能力者であるか、それとも制限行為能力者であるかは、(未成年者を除いて)実務上は確認が容易ではない、という問題があります。

制限行為能力者であることは、後見登記等に関する法律第4条第1項第5号により、法務局に登記されます。

この登記ですが、制限行為能力者の契約の相手方は、その登記事項の証明書(正式には「登記されていないことの証明書」)の交付を請求できないことになっています(制限行為能力者本人やその関係者はできます)。

制限行為能力者に「登記されていないことの証明書」を提示してもらわなければならない

つまり、制限行為能力者の契約の相手方は、制限行為能力者の側に対して登記事項の証明書の提示を求めることによってしか、相手方が行為能力者か、それとも制限行為能力者かのを判断できません。

このように、制限行為能力者との契約は、非常にリスクが高いといえます。こ

のため、行為能力に制限があると疑われる相手方(特に未成年者や高齢者など)との契約は、特に慎重に検討するべきです。




制限行為能力者に関するよくある質問

制限行為能力者とは何ですか?
制限行為能力者とは、行為能力が制限される「(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助人」(第13条第1項第10号)のことです。
制限行為能力者の4種類とは何ですか?
制限行為能力者の4種類は、以下のとおりです。

  • 未成年者
  • 成年被後見人
  • 被保佐人
  • 被補助人
何歳から制限行為能力者となりますか?
未成年者の場合は、出生から17歳までが制限行為能力者である期間となります。その他の制限行為能力者は、年齢による判断はされません。
行為能力とは何ですか?
行為能力とは、私法上の法律行為を単独で完全におこなうことができる能力のことです。
制限行為能力者は誰が決めるのですか?
未成年者以外の制限行為能力者は、裁判所が決定します。
制限行為能力者の取消権の時効は?
制限行為能力者の取消権は、「追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。」(民法第126条)とされています。